加齢に伴い背骨が全体的に側方に曲がってしまうものが変性側弯症です。変性側弯が生じても無症状であったり、症状が強くなければ、必ずしも手術が必要なわけではありません。中には、骨粗しょう症が影響して側弯が生じてくることもあるので、骨粗しょう症に対する正しい診断を受け、必要であれば内服や皮下注射などの各種治療を受けることも変性側弯の進行予防という意味では大切です。骨粗しょう症が重度になる前に正しい治療を受けることは、腰椎変性側弯症に対してだけでなく、転倒に伴う背骨や股関節の骨折で健康寿命を短縮させないためにも重要です。
腰椎変性側弯によって下肢の痛みやしびれ、筋力低下が生じてくる場合には、手術が必要になることもあります。手術方法は、変性側弯の状況により様々です。骨を削り神経への圧迫を解除するだけで良い場合は、手術用顕微鏡や内視鏡を用いた繊細な技術が有効な場合があります。ただし、神経への圧迫解除に加え、インプラントを用いた部分的な固定術が必要になることもあります(図1)。さらに、変形が非常に強く身体のバランスが悪い場合には、インプラントで広範囲に背骨の変形を矯正して固定する手術をせざるを得ないこともあります(図2)。これらの手術は、症状が軽くなる一方で、背骨の可動性が失われるという問題もあるので、担当している医師と十分に相談することが大切です。
【図1】インプラントを用いた部分的な固定術。左が術前の正面像、右が部分的な固定術後の正面像 |
【図2】変形が非常に強く身体のバランスが悪い場合には、インプラントで広範囲に背骨の変形を矯正して固定する手術をせざるを得ないこともあります。左から順に術前の正面像、術前の側面像、矯正固定術後の正面像、矯正固定術後の側面像。
【執筆担当】 | 脳神経センター 大田記念病院 脊椎脊髄外科 大隣 辰哉 |