脊椎(せぼね)に垂直方向の力が加わって、潰れるように折れてしまう骨折です。若い方でも起こりますが、加齢とともに骨が弱くなると起こりやすく、特に骨粗鬆症の方に多く発症します。骨粗鬆症の方が転倒したり、時には重たいものを持った時や、体をひねっただけで生じることもあります。
主な症状は背中や腰の痛みです。特に立ったり座ったりした時に悪化し、横になると軽くなりが、寝返りでも痛みがでやすいです。これは骨折したばかりの骨に荷重がかかるためですが、骨が潰れて固まっていくと、徐々に痛みが軽減します。しかし、十分に固くならずグラグラした状態(骨がきしんで偽関節状態になります。)が続くと、慢性腰痛の原因となったり、潰れた椎体によって神経が圧迫され下肢の痛みや筋力低下(遅発性神経麻痺)、排尿排便障害の原因となったりすることもあります。
検査としては、レントゲンやCTで潰れた椎体を確認できますが(図1)、新しい骨折か古い骨折かを区別することが難しく、新しい骨折でも骨の変形が少ない場合には診断が難しいことがあります。一方MRIでは、新しい骨折と古い骨折の区別がつけやすく、骨折部の変形が少ない場合でも骨折を診断しやすいという特徴があります(図1)。
図1.第1腰椎の圧迫骨折。レントゲン画像とCT画像、急性期のMRI画像。
第1腰椎の椎体が潰れていますが、特にMRIでは新しい椎体骨折部は色調が白く変化します。
治療は、安静とコルセット装着による外固定、疼痛管理のための投薬で経過を見ることが多いです。しかし、これらの治療を行っても強い痛みが続く場合には、手術を行うこともあります。代表的な手術に、経皮的椎体形成術というものがあります。これは骨折した椎体の中にセメントを注入して、固めるという治療です。最近では、最初に椎体の中に風船(バルーン)を入れて膨らませ、潰れた椎体を持ち上げてからセメントを注入するバルーンカイフォプラスティー(BKP)という治療が保険認可され、広く行われるようになりました。これは、多くは全身麻酔下に5mm程の創部から潰れた椎体内に穿刺針を刺入して行います(図2)。潰れた椎体をセメントによって安定化させて、痛みを和らげます。もちろん手術を行ったあとも、骨折した椎体の治癒を促進したり、さらなる圧迫骨折を予防したりするために、骨粗鬆症に対する治療も必要になります。詳細は専門医にご確認ください
図2.BKP手術中の透視画像です。骨折した椎体内に経皮的にバルーンを挿入して膨らませて、セメントを注入するスペースを作ります。術後のレントゲン画像とCT画像では、骨折した椎体内にセメントが注入されているのがわかります。
図3.第一腰椎が破裂するように骨折し、潰れた椎体によって脊髄の通り道である脊柱管が狭窄しています(椎体破裂骨折)。背中側(図の右側)に突出した骨により脊髄や馬尾神経が圧迫され、下肢の痛みや筋力低下(遅発性神経麻痺)、排尿・排便障害の原因になり得ます。 |
【執筆担当】 | 東京慈恵会医科大学 脳神経外科 川村大地 平和病院 横浜脊椎脊髄病センター 脳神経外科 野中康臣 藤沢湘南台病院/横浜市立大学 脳神経外科 田中貴大 順天堂大学附属順天堂医院 脳神経外科 原毅 |