一般社団法人日本脊髄外科学会

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胸髄症(椎間板ヘルニア、脊椎症)

胸椎疾患

一般診療で胸椎が問題になることは、頚椎や腰椎に比べると多くありません。それは、胸椎には肋骨が付いて胸の前側で連結する鎧のような形状をしているため、ずれやすべりが起きにくいからです。また、首(頚椎)や腰(腰椎)に比べると動きが少ないので、長年使用しても障害が起きにくいためです。それでも胸椎にはいくつかの問題が生じることがあり、以下に解説します。

胸椎の基本的なしくみ(構造)

せぼね、つまり脊椎(せきつい)は、ブロック状の骨である椎骨(ついこつ)が縦に積み重なってできており、その内部には頭からお尻にいたるまで縦貫するトンネルのような通路があります(脊柱管;せきちゅうかん)。脊柱管の中には、丈夫で硬い膜(硬膜;こうまく)でできた筒があり、その中は保護液(髄液;ずいえき)で満たされています。この髄液の中には、脳から出て全身に向かう神経の大もと、脊髄(せきずい)があります。脊柱管と硬膜の間には、椎骨の間のすき間をふさぐようないくつかの靱帯(じんたい)がありますが、脊柱管内の前方には縦に連続する後縦(こうじゅう)靱帯、脊柱管後方には黄色(おうしょく)靱帯があります。それぞれの靱帯は弾力がある薄いものなので、CTスキャンやMRIにほとんど写りません。

胸髄症(椎間板ヘルニア、脊椎症)

脊椎を構成する骨(椎骨)どうしの間には、クッションの役割を果たす椎間板があります。椎間板の表面は丈夫な線維輪で覆われており、内部にゼリーのような柔らかい髄核(ずいかく)が収められています。この椎間板が長年の負担で傷んだり、急な過重、外傷で壊れてしまうと椎間板から髄核が飛び出してしまうことがあります。「本来の場所から飛び出ている」状態を医学的には「ヘルニア」と呼ぶため、このような状態を椎間板ヘルニアと呼びます。椎間板ヘルニアが神経を圧迫すると後述のような強い症状があらわれることがあります。
脊椎の椎間板ヘルニアは、頚椎と腰椎に多く、胸椎で起きることは少ないです。それは胸椎が頚腰椎に比べて可動性が低く、それに伴う負荷が少ないことが理由でしょう。
胸椎の椎間板ヘルニアが起ると、後方にある脊髄が障害され、両下肢の運動障害(対麻痺;ついまひ)や感覚障害がおこることがあります。また、排尿排便障害が生じることもあります。一方、胸椎のヘルニアでは頚椎や腰椎のヘルニアでよく見られる強い神経痛は伴わないことも多いです。一般に、神経症状がある場合は神経を圧迫している椎間板ヘルニアの摘出手術(直接除圧)が必要ですが(胸椎後靱帯骨化症の項参照)、頚椎や腰椎の椎間板ヘルニア摘出手術と違い、難易度は高いです。ただ、椎間板ヘルニアは後縦靭帯骨化症と違い、硬膜の癒着が少ないため、手術中の硬膜損傷リスクは骨化病変よりは高くありません。
頚椎や腰椎では、加齢変化による障害(脊椎症)がよくおこりますが、胸椎では先にご説明した理由で脊椎症やそれによる脊髄・神経圧迫症状は少ないです。それでもたまに、黄色靱帯が加齢による変化で肥厚し、脊髄を後ろから圧迫することもあります。症状があるようなら手術を検討しますが、手術内容は胸椎黄色靱帯骨化症の手術と概ね同じです(胸椎後靱帯骨化症の項参照)。

【執筆担当】 一宮病院 脳神経外科 安田宗義

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