何らかの原因によって脊椎に細菌感染が起こっている状態です。(結核菌が脊椎感染を生じた際は異なる病気として、脊椎カリエスと分類されます)。症状の発症の仕方には以下の3つのタイプがあり、その中でも亜急性発症と慢性発症型が多いとされています。
★ | 急性発症型 高熱と激しい痛みで発症 |
★ | 亜急性発症型 微熱と痛みで発症 |
★ | 慢性(潜行性)発症型 発熱等ははっきりせず、軽微な難治性の痛みで発症 *痛みは、感染した部分の近くの頸部痛や背部痛、腰痛として感じられやすい |
原因としては、血液を介した感染が大多数とされており、抵抗力の低い方に発症しやすい病気です(糖尿病や免疫抑制剤の内服、透析患者さんや高齢者に多いとの報告もあります)。まれに、尿路感染や虫歯などから化膿性脊椎炎を生じることもあります。
好発部位は、腰椎が最多で(50%以上)、胸椎が30%強、頸椎が10%程度です。脊椎の感染は椎体軟骨下骨部から椎間板、その後に隣の椎体に波及すると言われています。
検査としては、採血での炎症反応上昇を確認します。また、血液を培養し、細菌の同定を試みます(おおよそ半数では検査で菌の検出が可能です)。原因菌は黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などが多いとされていますが、昨今はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの抗生物質が効きづらい菌も散見されます。
画像検査ではレントゲンやCTで骨の破壊を確認できることもありますが、早期診断にはMRIが優れており、破壊された椎間板や膿が描出できることがあります。詳細は専門医にご相談ください。
脊椎レントゲン 腰椎CT、MRI
進行性の化膿性脊椎炎の患者です。レントゲン写真では骨破壊や融解像(○部分)などがみられます。これらはCTでより明確に確認できます(○部分)。MRIでは、骨破に加え、膿のたまりを確認できます
MRI膿は神経周囲や周りの筋肉内に散らばることがあります。(硬膜外膿瘍○や腸腰筋膿瘍等)。
治療は、適切な抗生物質を投与しますが、発熱がある時点で、原因となる細菌が定まる前から抗生剤が開始されることが多いです。また、コルセットなどを用いて感染をきたしている脊椎を固定して(脊椎の動きを減らして)安静にすることが一般的です。しかし、このような治療で改善が乏しい場合には、手術が必要になることもあります。手術は、感染巣を洗浄掻把したり、局所安定のための固定術を選択されたりしますが、詳細は担当医と相談してください。
椎間板穿刺
感染している椎間板を穿刺して細菌を摘出し、細菌の種類の同定を試みます。更に、局所洗浄を行うこともあります。
腰椎自家骨移植術
掻把した椎間板の状態によっては自分の骨を移植することがあります。
腰椎後方固定術
感染した脊椎の部位の動きを止めると感染が治癒しやすいと言われているのですが、コルセットを装着するだけでは十分な脊椎の固定ができないため、脊椎に直接スクリュー(ネジ)を打って金属製のロッド(棒)に繋いで動きを止める腰椎固定術を行う事もあります。
参考文献
山下 俊彦ら:高齢者における化膿性脊椎炎の特徴と治療 関節外科 Vol,18 1999 No1
石川 裕也:人口6万人の佐渡島における化膿性脊椎炎 8 年間の動向:東北整形災害外科学会雑誌60巻1号 Page247
【執筆担当】 | 平和病院 横浜脊椎脊髄病センター 脳神経外科 野中康臣 東京慈恵会医科大学 脳神経外科 川村大地 藤沢湘南台病院/横浜市立大学 脳神経外科 田中貴大 順天堂大学附属順天堂医院 脳神経外科 原毅 |