脊椎とは背骨のことであり、その中を通っている脳から直接延びる神経を脊髄と言います。本来、脊髄は脊椎(背骨)によって守られていますが、妊娠初期に何らかの原因で脊髄が背骨で覆われない状態になってしまうことが二分脊椎です。原因ははっきり分かっていませんが、妊娠中の葉酸の摂取不足が原因の1つとなる場合があることが知られています。
二分脊椎は、神経組織が表皮に露出するものを「開放性」、露出していないものを「閉鎖性」と大きく2つに分けられます。
①開放性二分脊椎
開放性二分脊椎は、「脊髄髄膜瘤」とも言われ、腰に神経や神経を覆う膜の一部が出てしまっている状態です(図1)。出生後、神経組織露出部からの細菌感染を防ぐために、早期の閉鎖手術が必要になります。また、90%ほどに髄液(脳や脊髄神経を満たす液体)が脳に溜まる水頭症を合併し、脳に細いチューブを通して溜まった髄液をお腹へ排出させるシャント手術が必要になるので、約15%の患児では閉鎖手術とほぼ同時に水頭症に対する治療を開始します。開放性二分脊椎には、下肢障害や排尿・排便障害も合併し、これらへの治療を継続的に行う必要もあるので、このような疾患の治療に慣れている専門病院での相談が勧められます。
出生前診断として超音波検査や、精度は70%程ではあるものの妊娠15~18週に母体の血液検査でアルファフェトプトテイン濃度の測定が行われます。また、安全面から妊娠18週以降での施行にはなりますが、出生前MRI精査もおこなわれます。
図1.開放性二分脊椎である「脊髄髄膜瘤」の腰部外観写真(左)と正中で縦切りにしたMRIで描出される同部位(いずれも矢印の部位)。
②閉鎖性二分脊椎
閉鎖性二分脊椎のうち、頻度が高いのが「潜在性二分脊椎」と呼ばれる状態です。外見からは明確でない脊髄の形成異常が問題となります。男児より女児に2~3倍多く、腰仙部に好発します。これらに共通する神経障害として重要なのが脊髄係留症候群です。これは腰の二分脊椎がある部位で神経が周辺の組織に癒着し、成長期に身長が伸びるにしたがって脊髄が尾側に引っ張られ、下肢障害や排尿・排便障害などの脊髄機能の障害が生じてくる疾患です。開放性二分脊椎とは異なり、出生から乳幼児までに症状がみられることは少なく、水頭症を合併することもないので、症状が出てから発見されることもあります。
成長期に一旦症状が出現すると、治療を行っても回復が困難な場合もあるので、症状が出る前に予防的に神経の癒着などを解除する手術をおこなうこともあります。しかし、予防的な手術を行っても、成長期に再び症状が出ることもあり、複数回の手術を要することもあります。
二分脊椎に関しては、脳神経外科的治療だけでなく、小児科・泌尿器科・整形外科・リハビリテーション科などの長期的なサポートが欠かせないため、小児脳神経外科領域を専門的に扱っている施設(各都道府県に数か所摂設置)にご相談頂く場合が多くなると思います。
【執筆担当】 | 脳神経センター 大田記念病院 脊椎脊髄外科 大隣 辰哉 |