脊柱管内の硬膜外スペースに存在する腫瘍です。硬膜外スペースに発生する場合と、脊椎や脊柱管外に発生した腫瘍が脊柱管内へ進展する場合があります。これらの腫瘍は、硬膜の外から脊髄を圧迫します。また、脊椎を破壊して脊柱の不安定性を起こすこともあります(図3)。
組織学的には、神経鞘腫 schwannoma、神経線維腫 neurofibroma、髄膜腫 meningiomaなどの末梢神経や硬膜から発生する腫瘍や、脊索腫 chordomaなどの脊椎から発生する腫瘍、他の臓器に発生した腫瘍が血行性あるいは浸潤性に硬膜外スペースに進展する転移性腫瘍などがあります。
(図3)脊髄硬膜外腫瘍
多くは、頚部痛・背部痛・腰痛などの腫瘍が発生した脊髄脊椎レベルに応じた痛みで発症します。また、硬膜の外から脊髄や神経根を圧迫すると、進行性の神経症状(運動麻痺、知覚障害、膀胱直腸障害)を生じます。
診断には、X線撮影、CTscan、MRIなどが行われます(図3)。X線撮影やCTでは、脊椎の骨破壊像や骨硬化像が認められる場合があります。MRIでは、腫瘍が描出されて脊髄への圧迫程度も確認できるため、有効な検査法となります。確定診断は、画像検査所見と病歴で診断が明らかな場合もありますが、原則は手術などで腫瘍組織を採取し、病理組織診断を行う事が必要です。
診断後の治療は、腫瘍の性質によって大きく異なりますが。放射線治療や化学療法を追加加療として行われる場合もあります。また、追加治療が当面は不要とされた場合でも、定期的には来院して頂き、神経症状の診察とX線撮影・MRIなどによるチェックを行います。
転移性硬膜外腫瘍では、原発巣に対する放射線治療や化学療法を行う事が原則です。手術的加療としては、①確定診断が必要な場合の生検術、②脊髄馬尾神経への圧迫を減らす必要がある場合の除圧術、③骨破壊により脊柱の不安定性を伴っている場合の固定術、などが行われます。