後縦靱帯骨化症とは、頸椎椎骨の背面(神経側)の靱帯が通常の何倍もの厚さになって骨の様に硬くなり(靱帯の骨化)、徐々に脊髄を圧迫してくる病気です(図3)。この病気は欧米人に比較してアジア人に多く発生することが知られていますが、何故、この様に靱帯が骨化するのかについては、残念ながら分かっていません。

おもな症状は、骨化した靭帯によって脊髄が圧迫されることで生じますので、症状は頸椎症性脊髄症の症状に似ています。手足のしびれや、ボタンのはめ外し、箸の使用、字を書くことなどが不器用になる(巧緻運動障害)、歩行でバランスが悪く脚がもつれるような感じになり階段で手すりを持つようになる、という症状が出ます。通常、症状はゆっくりと進行しますが、道で転倒するなどの比較的軽い外傷にもかかわらず、急激に四肢麻痺などの極めて重い症状が出現することもあります。
検査は、レントゲン撮影やCT、MRIなどが行われ、骨化した頚椎の後縦靱帯で脊髄が圧迫されていることを確認し、脊髄の圧迫部位に矛盾しない症状や身体所見があることを確認します。
この病気の進み方は患者さんにより様々です。軽い「しびれ」や鈍痛が大きな変化を認めずに長年経過する方がいる一方で、数ヶ月から数年の経過で手足の動きが強く障害される場合もあります。この病気は経過が様々であること、病気の進行が正確には予測できないことから、経過観察を行いながら、必要に応じ服薬や安静、理学療法などの保存的療法を行うことが原則です。全く無症状で偶然に発見された場合には、特に治療はせずに経過を定期的に観察することもあります。一方、保存的療法を行っても症状が進行し、日常生活に不便を覚える場合には手術的療法を検討します。また、全く無症状で偶然に発見された場合や、症状が軽度であっても、脊髄の圧迫が強い場合には、今後の悪化を予防する為に手術的療法を行う場合もあります。