環軸椎亜脱臼は、第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)がずれ、不安定になる病気です(図1)。関節リウマチの患者さんに生じることが多い病気ですが、リウマチがなくても、加齢、外傷(歯突起骨折)、歯突起骨、環椎頭蓋癒合症、歯突起後方偽腫瘍、ダウン症、モルキオ病などにも生じます。
最も多い初期症状は、後頭部や後頚部の痛みです。病状が進むと手足のしびれや麻痺を生じますが、初期には腕の異常感覚や手の細かな運動の障害(巧緻運動障害)から始まることが多いです。一般的に初期の症状は、軽微であったり、多様・複雑で変動したりと、診断が難しい部位の病気です。
検査は、レントゲン撮影やCT、MRIなどが行われ、第1・第2頚椎部で脊髄が圧迫され、この部位での脊髄の圧迫に矛盾しない症状や身体所見があることを確認します。
この病気の進み方は患者さんにより様々です。軽い「しびれ」や鈍痛が大きな変化を認めずに長年経過する方もおられる一方で、数ヶ月から数年の経過で手足の動きが強く障害される場合もあります。
治療の基本は、頚部の安静を保つことであり、頚椎カラーという装具を使用して頚部を固定する場合もあります。また、関節のずれを矯正するために、入院して治療を行うこともあります。痛みに対しては鎮痛剤が使用されますが、症状が重篤となった場合や、症状が進行する場合には手術治療が必要となります。
手術は安定性が損なわれた環軸椎を安定化させて脊髄への圧迫を軽減する目的に実施されます。近年、インプラント(金属)を設置して環軸椎を固定する手術が多く実施されています。
【執筆担当】 | 信愛会脊椎脊髄センター交野病院 上田茂雄 |